計画班

加藤 晃一

自然科学研究機構・岡崎統合バイオサイエンスセンター
教授 薬学博士
領域での役割 領域代表、A03班長
計画研究代表者
研究課題 生命分子の動的秩序形成におけるミクロ‐マクロ相関の探査と設計原理の探求
研究分担者 佐藤匡史
名古屋市立大学大学院薬学研究科
准教授 博士(生物資源科学)
山口拓実
北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス系
准教授 博士(工学)
栗原顕輔
自然科学研究機構 岡崎統合バイオサイエンスセンター
特任准教授 博士(学術)
連携研究者 矢木真穂
自然科学研究機構 分子科学研究所 
助教 博士(薬学)
谷中冴子
自然科学研究機構 分子科学研究所
助教 博士(生命科学)
研究目的  生命システムの動的秩序形成におけるミクロ-マクロ相関の探査を可能とする物理化学的計測手法を開発し、これを応用した生命分子集合・離散系の動態観測を高精度で実現する。これにより、生命分子素子がダイナミックな集合離散を通じて動的な秩序構造を形成するメカニズムを明らかにするとともに、生命分子集団の自己組織系に内在する精緻にデザインされた不安定性をあぶり出し、機能発現にいたる時空間的展開の原理を理解することを目指す。また、生命分子システムのデザインルールを取り入れた人工自己組織化システムの創生に資することを目的とする。生命超分子集合体は、外部環境の変動や超分子集合体間のコミュニケーションを通じて時空間的発展を遂げている。生命分子システムの有するこうした特徴の本質を深く理解し、それを積極的に人工超分子系の設計に取り入れることは、分子科学におけるパラダイムシフトをもたらすことが期待される。

佐藤 啓文

京都大学・工学研究科分子工学専攻
教授 博士(理学)
領域での役割 A01班長、事務局
計画研究代表者
研究課題 分子集積と秩序形成の分子理論
研究分担者 山本武志
京都大学理学研究科
助教 博士(理学)
連携研究者 藤田貴敏
自然科学研究機構・分子科学研究所 
特任准教授 博士(理学)
研究目的  「分子はどの様にして組み上がっていくのか」 — これは自己組織化系はもとより、無数の身近な化合物の生成にも通底する、普遍性の高いシンプルな問いである。しかしこれに答えることは実は容易でない。極めて複雑な超多次元のエネルギー面上での長時間に渡る動態を理論的に特徴付けることは、既存の物理化学・理論化学的手法では未だに難しい。本課題では、申請者らが開発してきた積分方程式理論や QM/MM 法などを総合的に駆使しながら、幅広い空間・時間スケールの自己組織化のダイナミクスを記述できる新しい方法論を開拓する。さらに実験研究者と協力しながら多様な実在の系へ展開し、新規な系の設計に役立つ知見を得る事を目標とする。

平岡 秀一

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻
教授 博士(工学)
領域での役割 A02班長
計画研究代表者
研究課題 分子表面の精密デザインに基づく人工系における自己組織化制御
研究目的  生体分子はエネルギーの近い複数の種の間の構造変換やそれ自身のもつ動的特性により環境に応答した多様な機能発現や調節を行っているが、その詳細なメカニズムは解明されていない。生命特有の機能発現に関わる重要な分子間相互作用としてvan der Waals (vdW)力があるが、複雑三次元表面に働くこの力の寄与を簡便かつ精密に解析する手法の開発、および生命系の機能発現場となる水中においてvdW力と疎水効果をそれぞれ定量評価する試みは行われてこなかった。本研究では、人工系の自己組織化分子を利用し、「分子の噛み合い」 の解析手法の開発と複雑三次元表面に働くvdW力と疎水効果を定量評価し、生命系の揺動特性に由来する機能発現の機構解明、溶媒効果の寄与と自己組織化ダイナミクスを考慮した精密自己組織化のデザイン、相補的三次元表面のデザインに基づく物質開発を推進する。

寺嶋 正秀

京都大学・大学院理学研究科
教授 理学博士
領域での役割 A01 計画研究代表者
研究課題 動的秩序・崩壊のダイナミクスから観る高次機能発現の分子機構解明
研究目的  生命の機能を担う分子集合体は、ユニット間の情報伝達を行うことで、機能システムの中に組み込まれている。それは静的なものではなく、離合を行う動的なものである。ここでは動的秩序形成の時間分解計測可能なシステムを構築し、どのように信号が伝達し、秩序が出来上がっているかを分子レベルで明らかにする。そのために、動的秩序・崩壊を時間分解で検出できるシステムの高感度化と一般化を目指す。これを用いて、機能に関係する反応機構を分子間相互作用変化と関連付けて時間分解で検出することを試みる。例えば、光感知ドメインと生理学的な機能ドメインを含むマルチドメインタンパク質について、分子間相互作用変化がドメイン間相互作用とどのように関係しているか、その変化が如何にして次のネットワークに組み込まれていくかを明らかにする。また、人工自己組織化システム創世へ向けて、検出システムの発展も試みる。

上久保 裕生

奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科
教授 博士(理学)
領域での役割 A01 計画研究代表者
研究課題 機能を生み出す単位生体分子集団(機能モジュール)の動的秩序の探査
研究分担者 片岡幹雄
奈良先端科学技術大学院大学
理事・副学長 博士(工学)
研究目的  弱い相互作用で関連づけられた分子集団は、常温での熱揺らぎや構成要素への摂動によって、容易に離合集散を繰り返し、集団として様々な秩序状態をとることができる(動的秩序)。生命システムにおいては、タンパク質集団が示す動的秩序によって、多数の分子間での情報伝達、物質輸送制御、形態変化等の生理機能を実現している。従って、生命システムの特性を理解するためには、個々のタンパク質、あるいは、1対のタンパク質の間の相互作用を解析するだけでは十分とは言えない。本研究では、生理活性を生み出す単位分子集団(機能モジュール)をターゲットとし、主として量子ビームを活用した溶液散乱法を拡張した動的秩序の探査法を確立することで、機能モジュールが示す動的秩序の特性理解を目指す。

芳坂 貴弘

北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス系
教授 博士(工学)
領域での役割 A02 計画研究代表者
研究課題 生命分子システムの有機化学的拡張による動的秩序の創出
研究目的  タンパク質の動的秩序形成能は、生物の長い進化の過程でアミノ酸配列を最適化することで獲得されたものであり、その原理を理解して人為的に制御することは未だ容易では無い。その一方で、非生体系分子を用いることで、人工的に設計された動的秩序形成系を創出することも試みられているが、タンパク質のような高度な機能発現を達成するには至っていない。本研究では、申請者がこれまで開発してきた非天然アミノ酸の部位特異的導入技術を用いて、タンパク質の本来の機能と人工的な動的秩序形成能を併せ持つ人工タンパク質の創出を目指す。具体的には、タンパク質の集合・離散系において、光応答性分子や架橋分子、蛍光分子を有する非天然アミノ酸を導入することで、集合・離散過程を計測するとともに光などの外部刺激によって制御することを試みる。加えて、動的秩序形成能を有する非生体系分子系をタンパク質に導入することで、タンパク質の動的秩序を制御することなども試みる。

佐藤 宗太

東京大学大学院理学系研究科化学専攻
特任准教授 博士(理学)
領域での役割 A02 計画研究代表者
研究課題 生体分子系を模倣した動的秩序をもつ人工分子の開発
連携協力者 長田裕也
京都大学大学院工学研究科 
助教 博士(工学)
研究目的  本研究では、数十を超える相互作用がつくり出す多成分からなる超分子集合体を基軸に、その構築過程に動的な秩序形成を組み込むことを目的とする。構造が大きく切り替わる「秩序の相転移」とも呼ぶべき現象を自在に操り、超分子骨格上に導入した柔構造をもつ官能基による多点分子認識も活用することで、例えば、従来の静的な多成分構造体を超えて、環境への応答や時間展開によりナノスケールの分子全体の構造が大きく変化する「人工タンパク質輸送小胞」の合成や、生体内機能を保持したまま生体関連分子を化学修飾した「サイボーグ超分子」の合成が可能になる。異なる時間軸で展開する生体分子系を模倣した動的な超分子集合体が示す、動的機能を活用した生命分子科学的展開をめざす。動的な秩序形成を念頭に、多数の弱い結合(配位結合やファンデルワールス相互作用)の共同効果によって支えられた多成分からなる超分子集合体を、段階的な分子の集合と離散を伴う分子設計に立脚して合成するという構想は、国内外の研究に照らして新しい着眼点である。本研究目的を達成するために、A01、03班と連携して実験的に錯体の動的挙動を明らかにすると共に、領域内の理論グループと連携し、いかにしてこの錯体のダイナミクスが生み出されるかを明らかにする。

岡本 祐幸

名古屋大学・大学院理学研究科・物質理学専攻(物理系)
教授 Ph.D.
領域での役割 A03 計画研究代表者
研究課題 生体分子集団および人工分子集団の相互作用と大規模構造転換
研究目的  生体分子集団の離散集合を通じて動的な秩序構造の形成および大規模構造転換のメカニズムを明らかにするために、分子シミュレーションの手法を用いて、分子集団系の精密計算を実施する。生体系のような多自由度複雑系では、系にエネルギー極小状態が無数に存在し、それらが高いエネルギー障壁で隔てられているために、従来の分子シミュレーションでは、初期状態の近傍に留まってしまい、誤った答えを出してしまう困難があった。拡張アンサンブル法はこのような従来の手法の困難を克服するものであり、構造空間のランダムウォークを実現して、エネルギー極小状態に留まるのを避ける。そして、幅広い温度領域において、熱力学量の精度の高い計算を可能にする。本研究の目的は、本領域内の様々な研究との共同研究のために、それらのテーマに適した、新しい強力な拡張アンサンブル法の開発を行なうことである。

稲垣 直之

奈良先端科学技術大学院大学・バイオサイエンス研究科
教授 医学博士
領域での役割 A03 計画研究代表者
研究課題 生体分子素子の自己組織化による細胞の動的秩序形成
研究目的  細胞内では、構成分子が動的な集合体を形成することにより様々な高次機能を発現するが、高次細胞機能の発現を分子素子の動的な集合・離散の視点に立脚して解析した試みは、ほとんどなされていない。本研究では、シグナル伝達を力に変換する分子集合体をモデルシステムとして、生体分子素子の動的なエネルギー・結合力・構造変化や自己組織化を起点として、時間経過とともに、力の発生さらには高次の細胞機能へと至る機構を、in vitro、神経細胞、人工再構築系を用いた複数の階層にまたがる一連の研究を通じて解明する。具体的には、神経軸索伸長のための力発生の原動力となるアクチン線維の集合・離散と、シグナル→力の変換を担うShootin1-Cortactin 複合体の形成メカニズムに焦点を絞って分子構造学的、理論的、細胞生物学的研究を展開する。さらに、自発的に突起を伸ばす人工系を再構築することにより、細胞運動に必要十分となる最小限の高次分子集合体の特定を目指す。