本領域の目的

生命現象の特質は、システムを構成する多数の分子素子がダイナミックな離合集散を通じて秩序構造を形成し、外的環境との相互作用を行いつつ、自律的に時間発展していくことにある。前世紀末期に勃興したオミクスアプローチは生命体を構成する分子素子に関する情報の網羅的集積を実現した。しかしながら、それらの生命素子が自律的に柔軟かつロバストな高次秩序を形成するメカニズムを理解することは、これからの生命科学の重要な課題である。 本領域は、化学・物理学・生物学の分野横断的な連携を通じて、内的複雑性を秘めた生命分子素子が動的な秩序を形成して高次機能を発現する仕組みを分子科学の観点から解き明かすことを目指す。

生命分子システムにおける動的秩序形成の概念図

本領域の内容

本領域では、分子が自律的に集合するプロセスについて精密に探査することを可能とする実験と理論の融合研究を実施する(研究項目A01「動的秩序の探査」)。また、生命分子科学と超分子化学のアプローチを統合することを通じて、生命分子システムの特質を具現化した動的秩序系を人工構築する(研究項目A02「動的秩序の創生」)。さらに、生命分子の自己組織化系のデザインルールを明らかにするとともに、外的摂動に対するシステムの不安定性とロバストネスを解明することを通じて、高次機能発現に至る時空間的展開の原理を理解する(研究項目A03「動的秩序の展開」)。

本領域の概要

期待される成果と意義

本研究領域は、生命分子科学と超分子化学の融合により、生命現象の諸相にみられる分子の秩序形成の原理を統合的に理解するとともに、その人工構築を目指すものである。その成果は、創薬をはじめとする産業応用の進展に資するとともに、生命科学一般の深化と分子科学におけるパラダイムシフトをもたらし、人工的な生命システムを設計・創生するための指導原理を導き出すことが期待される。